Step.10 教育
飲食店におけるスタッフの教育について、重要なポイントが3つあります。
■ポイント@:スタッフを育てるつもりで雇用する
経営者は従業員に対し、教育しようと思っていても、自分でも気づかない本心では、
「こっちは給料を払ってるんだから、その対価として言うとおりに動いてもらのは当然」
と思い、従業員に接している飲食店オーナーも多いです。
その気持ちは、言わなくても自然と行動に出てしまい、従業員に伝わります。
それでは、温かみのあるお店にはなれません。
そのようなお店には、お客さんも来店しません。
自分の店で一緒に働いてもらえることになったのも何かの縁です。
自分の子供を育てるつもりで、長い目で見守って、教育していくことが重要です。
■ポイントA:スタッフがずっと働いてくれると想定しない
飲食店では、従業員の多くはアルバイトです。
アルバイトは、学生の若いスタッフが多いでしょう。
学生は卒業と同時に、企業に就職してアルバイトを辞めることになります。
早い学生であれば、就職活動が本格化すると同時に、辞める学生もいるでしょう。
しかし、とかく経営者や店長は、アルバイトを辞めることに対する計画的な準備がないお店も多いです。
そうすると、辞めることになって、慌てて求人広告を発行して、対応に追われてしまいます。
したがって、おすすめは最初の採用の面接時に、いつまで働いてくれる予定かも予め聞いておきます。
そうすれば、辞める日が近づくと、早めに求人をかけ、スタッフを雇用し、余裕をもって業務を引き継いでもらえます。
最初から辞めることを想定することに対して、
ポイント@の家族のように接することと矛盾を感じる方もいるかもしれませんが、
家族であっても、子供はやがて大人になり、自分の家庭を持つようになります。
それと同じで、重要なことは、飲食店で働いてくれている間に、どれだけのものを身につけてもらい、
社会に巣立って行ってもらうかを考えて教育することです。
その成長ゴールを、経営者とスタッフで共有し、ゴール目指してWin−Winの関係で働いてもらえば、
スタッフもやる気を持って自分のお店のように考え、行動してもらえるようになります。
■ポイントB:マニュアル・チェックシートをフル活用
シフトに入っているスタッフによって、料理の味や接客トークが変わってしまっては、お客様は混乱します。
業態を確立して、どのスタッフがシフトに入っても、お客様に共通のメッセージを伝えられるようにするには、
全従業員が同じように行動をとる必要があります。
そんなオペレーションの平準化をするには、マニュアルが必要です。
例)・調理マニュアル
・接客マニュアル
・清掃マニュアル
また、せっかくマニュアルがあったとしても、その行動に漏れがあってはいけません。
全員が忘れることなく、必要な行動を全てとってもらうためには、チェックシートを活用します。
例)・開店業務チェックシート
・閉店業務チェックシート
・衛星管理チェックシート
これらを最初に用意しておき、マニュアルとチェックシートを使ってスタッフを教育することで、
スタッフは、自分のやるべきことが明確になり、忘れたときには見直すこともできます。
結果、全スタッフが同じレベルの行動をとることができるようになります。
上記ポイントを踏まえたうえで、教育するステップとしては、次の4つです。
■ステップ@:ビジョンを語る
飲食店を開業するにあたって、オーナーが
「なぜこの飲食店を開業したいと思ったのか」
「どんなお店にしたいのか」
「お客様に、どんな気持ちでお帰りいただきたいのか」
「将来、どのような展望を描いているのか」
そういった想いや考えを、本人自らの言葉で語ります。
これは本人以外、誰にも語ることはできません。
このビジョンこそが、お店の存在価値なります。
■ステップA:オペレーションの教育
調理スタッフには、調理器具の配置や、仕込み等の開店準備、
各メニューの使用食材と分量、調理手順といった調理方法まで全て教育します。
そして、誰が作っても同じ味が出せるようになるまで、何度も練習します。
ホールスタッフには、接客の流れやトーク、レジの使い方、各メニューの説明、
DMの書き方といったことを伝え、こちらも何度も練習します。
また、調理スタッフとホールスタッフの連携も重要です。
デシャップがある場合は、そこでのやり取りについてもルールを設けておきましょう。
■ステップB:清掃・衛生管理の徹底
お店の営業が終わった後の清掃箇所や清掃方法を統一します。
特にトイレの清掃には気を使いましょう。
また、食中毒を出さないように、手洗い・消毒などの衛生管理や食材の保存方法、
調理温度を徹底的に教育します。
■ステップC:繰り返し練習
上記ステップ@〜Bは、1回伝えただけでは誰もできません。
しつこいくらい、繰り返し何度も練習する必要があります。
したがって、1ヶ月前には全従業員が揃い、
オープンまでの期間は、オープン前研修として繰り返し練習します。
また、正式なオープン日を迎える数日前には、レセプションを開きます。
これは、関係者やメディア、近所の方を招いて行うお披露目会で、
実際に開業した後の予行練習にもなります。
ここで気づいた改善点があれば、早急に対応してオープン日を迎えるようにしましょう。
オープン後、従業員のモチベートを持続させるためには、公平な人事評価制度が必要です。
■公平な人事評価制度
単純に一律同じ時給制にすると、要領の良いスタッフは、ピーク時の出勤を避けたり、
嫌な仕事は目を盗んでサボったりします。
それでは、他の真面目なスタッフは、モチベーションを下げてしまいます。
したがって、「年末年始に出勤してくれた」とか、「駅前でビラ配りをしてくれた」とかに対して、
手当として給料に上乗せしたり、自店の食事券を与えたりといった評価制度を導入します。
そして、この評価項目をリスト化して、全スタッフが見える場所に貼っておけば、
スタッフが自分の目標を見つけて、努力しやすくなります。
この評価項目は、誰もができるものが良いでしょう。
例えば、キャッチングでお店に呼び込んできたお客様一人に対していくらというような評価制度では、
もともと営業の得意な人、苦手な人での差が出てしまい、
営業が苦手な人は最初からあきらめてしまって、モチベーションが下がってしまいます。
この評価制度については、人それぞれの考え方があるかと思いますが、
一致団結したお店づくりをするには、行動すれば誰でもできることに対する評価制度がお勧めです。
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